この記事でわかること
- 夏バテと貧血が連動する仕組み
- 「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」が気づかれにくい理由
- 鉄不足を食事で補う方法(ヘム鉄と非ヘム鉄の違い)
- 夏に貧血が悪化しやすい人の特徴と対策
「夏バテかと思ったら貧血だった」
外来でよく出会うパターンがあります。
「夏になるといつも疲れが取れない」
「朝から倦怠感があって、日中ぼーっとする」
「涼しい場所にいるのに体がだるい」
これらを「夏バテ」として放置している方に血液検査をすると、ヘモグロビン値が低い——つまり貧血が見つかることがあります。
夏バテと貧血の症状は重なります。
「夏バテが長引く」「毎年夏に体が辛い」という方は、貧血の可能性を疑ってください。
夏バテと貧血が連動する理由
汗で鉄が失われる
汗には鉄が含まれています。夏の大量発汗で、体内の鉄が少しずつ失われていきます。
特に運動習慣のある方・体を動かす仕事の方・外出が多い方は、夏の発汗による鉄の消耗が大きくなります。
夏バテで食欲が落ちると鉄の摂取量も落ちる
食欲が落ちると、肉・魚・豆類など鉄を多く含む食材が食卓から消えていきます。
「素麺・冷やし中華・そうめん」中心の夏の食事は炭水化物がメインになりがちで、鉄の摂取量が著しく減ります。
貧血で全身に酸素が届かなくなる
鉄はヘモグロビンの材料です。ヘモグロビンは赤血球の中で酸素を全身に運ぶ役割を担っています。
鉄が不足すると↓
ヘモグロビンが作れない↓
赤血球の酸素運搬能力が低下↓
全身の細胞に酸素が届かない↓
疲れ・だるさ・集中力低下・息切れ
これが「夏バテのような症状」として現れます。
「隠れ貧血」が気づかれにくい理由
健診で「貧血ではない」と言われても、実は鉄が不足しているケースがあります。
これを「潜在性鉄欠乏(隠れ貧血)」といいます。
血液検査で貧血を判定するのは主にヘモグロビン値(Hb)ですが、体内の鉄の貯蔵量を示すフェリチンという数値が正確な指標です。
| 検査項目 | 正常 | 鉄欠乏のサイン |
|---|---|---|
| ヘモグロビン(Hb) | 女性12g/dL以上、男性13g/dL以上 | これ以下で「貧血」 |
| フェリチン | 12ng/mL以上 | 12未満で貯蔵鉄枯渇 |
フェリチンが低い状態(貯蔵鉄の枯渇)では、Hbが正常でも倦怠感・疲れやすさ・集中力低下が起きます。
一般的な健診ではフェリチンを測定しないことが多いため、「健診で異常なし」でも隠れ貧血の方が多くいます。
特に女性(月経がある方)はフェリチン値を意識してください。
貧血・鉄不足になりやすい人
| 対象 | 理由 |
|---|---|
| 月経がある女性 | 月経で毎月20〜30mgの鉄を失う |
| 妊娠・授乳中の女性 | 胎児への鉄供給・母乳での消費 |
| 10〜20代の女性 | 成長期に加え月経で需要が高い |
| ダイエット中の人 | 食事制限で鉄の摂取量が減る |
| ベジタリアン・ヴィーガン | ヘム鉄(動物性)が摂れない |
| 長距離ランナー・激しい運動をする人 | 溶血(赤血球が壊れる)による鉄の消耗 |
| 胃腸が弱い人 | 鉄の吸収率が低下 |
日本人女性の約20%が鉄欠乏貧血またはその予備軍とされています。
ヘム鉄と非ヘム鉄の違い
鉄には2種類あり、吸収率が大きく異なります。
| 種類 | 吸収率 | 多い食材 |
|---|---|---|
| ヘム鉄(動物性) | 15〜25% | 赤身肉・レバー・かつお・まぐろ・あさり |
| 非ヘム鉄(植物性) | 2〜5% | ほうれん草・小松菜・納豆・豆腐・海藻 |
ヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄の約5〜10倍です。
「ほうれん草を食べているから大丈夫」と思っている方も多いですが、実際の吸収量は少ない。鉄補給には動物性食品(ヘム鉄)をメインにすることが大切です。
鉄吸収を上げる食べ方・下げる食べ方
吸収を上げる組み合わせ
ビタミンC+非ヘム鉄
ビタミンCは非ヘム鉄の吸収率を2〜4倍に上げます。
- ほうれん草(鉄)+ブロッコリー(ビタミンC)
- 納豆(鉄)+大根おろし(ビタミンC)
- 小松菜(鉄)+レモン汁(ビタミンC)
たんぱく質と一緒に
肉・魚・卵などのたんぱく質は、ヘム鉄の吸収効率を上げます。鉄を摂る食事にはたんぱく質を必ず合わせましょう。
吸収を下げる組み合わせ(避けるべき)
| 一緒に摂ると鉄の吸収が落ちるもの | 理由 |
|---|---|
| タンニン(緑茶・紅茶・コーヒー) | 鉄と結合して吸収を妨げる |
| フィチン酸(玄米・全粒粉) | 非ヘム鉄の吸収を阻害 |
| カルシウム(牛乳・乳製品) | 鉄と競合して吸収を下げる |
食事中・食後1時間は緑茶・コーヒーを避けることで、鉄の吸収率が上がります。
鉄を補う夏の食事プラン
朝:
- 納豆ごはん(玄米)+小松菜のみそ汁+オレンジジュース(ビタミンCで吸収アップ)
- または卵かけごはん+ほうれん草のおひたし(レモン汁で)
昼:
- かつお・まぐろ定食(赤身のヘム鉄)+玄米+海藻サラダ
- または牛赤身肉(ステーキ・焼き肉)+ブロッコリー
夜:
- 豚レバーの生姜炒め(ヘム鉄の王様)+小松菜のソテー
- または あさりの酒蒸し(ヘム鉄+ビタミンB12)+豆腐の味噌汁
間食:
- プルーン(鉄+食物繊維)
- ドライアプリコット
飲み物:
- 食事中は水・麦茶(緑茶・コーヒーは食後1時間以上あけてから)
夏バテ×貧血のダブルパンチから抜け出す食事の優先順位
夏バテと貧血が重なっている場合、どちらかだけを対処しても改善は遅いです。
同時に対処する食事戦略:
- 水分+ミネラル補給(夏バテの基本:麦茶・経口補水液)
- 鉄+たんぱく質(貧血対策:赤身肉・かつお・あさり)
- ビタミンB群(エネルギー代謝:豚肉・うなぎ・卵)
- ビタミンC(鉄の吸収アップ+抗酸化:ブロッコリー・パプリカ・レモン)
うなぎが「夏の土用の丑の日」に食べられる理由は科学的に理にかなっています。
うなぎはビタミンA・B1・B2・鉄・亜鉛が豊富で、夏バテ+貧血の両方に効く食材です。
貧血が疑われるサイン
以下のサインがある方は、一度血液検査でHbとフェリチンを確認してください。
- 体がだるい・疲れが取れない
- 少し動いただけで息が切れる
- 立ちくらみ・めまい
- 顔色が悪い・唇が青白い
- 爪が割れやすい・スプーン爪(爪が反り返る)
- 氷をかじりたくなる(氷食症:鉄欠乏の典型的なサイン)
- 集中力・記憶力の低下
- 髪が抜けやすい
「氷をガリガリかじりたい」という方は、鉄欠乏のサインとして非常に有名です。心当たりがあれば受診を。
まとめ:夏バテが治らない人への処方箋
夏にだるさが続く原因は、暑さだけではないかもしれません。
確認すること:
- 健診でヘモグロビン・フェリチン値を確認する
- 食事から鉄が取れているか見直す(赤身肉・魚・豆類を毎日食べているか)
- 緑茶・コーヒーを食事中に飲む習慣を見直す
今日からできること:
- 昼か夜の食事に赤身肉・かつお・あさりを1品加える
- 野菜を食べるときビタミンCと一緒に(レモン・ブロッコリー・パプリカ)
- 食事中の飲み物を緑茶→水・麦茶に変える
「毎年夏がしんどい」を繰り返している方へ——食事を変えると、今年の夏は違う夏になります。
この記事を書いた人:いっしん(看護師歴10年以上・元飲食経営者)
専門:予防医学・食事療法
運営:yoboshoku.com

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