この記事でわかること
- コレステロールが「高い=悪い」ではない理由
- LDL(悪玉)を下げ、HDL(善玉)を上げる食べ方
- 避けるべき脂質・積極的に摂るべき脂質の種類
- 看護師が現場で見てきた「脂質異常症のリアル」
「コレステロールが高いと言われたけど、何を食べればいい?」
外来でよく聞かれる質問です。
「健診でLDLが高めでした。油を全部やめた方がいいですか?」
答えは「No」です。
コレステロールを下げようとして油を全部抜くのは逆効果になることがあります。体はコレステロールを食事からだけでなく、肝臓で自分でも作るためです。
大切なのは「脂質をやめること」ではなく、「どの脂質を摂るかを選ぶこと」です。
コレステロールの基本知識
コレステロールは「悪者」ではない
コレステロールは:
- 細胞膜の材料
- ホルモン(エストロゲン・テストステロン・コルチゾール)の原料
- 胆汁酸(脂肪の消化に必要)の材料
- ビタミンDの前駆体
生命維持に不可欠な物質です。問題なのはコレステロール自体ではなく、バランスが崩れることです。
LDLとHDLの違い
| 種類 | 役割 | 目標値 |
|---|---|---|
| LDL(悪玉) | 肝臓からコレステロールを全身に運ぶ。増えすぎると血管壁に沈着 | 140mg/dL未満 |
| HDL(善玉) | 余分なコレステロールを肝臓に回収する「掃除役」 | 40mg/dL以上 |
| 中性脂肪(TG) | エネルギーの貯蔵。増えすぎると動脈硬化を促進 | 150mg/dL未満 |
LDLが高く・HDLが低い状態が続くと、動脈硬化→心筋梗塞・脳梗塞のリスクが高まります。
脂質の種類を知る
コレステロールへの影響は、脂質の「種類」によって全く異なります。
① 飽和脂肪酸(控えるべき)
LDLを上げる脂質です。
- 肉の脂身・バター・ラード・生クリーム
- ヤシ油・パーム油(お菓子・加工食品に多い)
完全に避ける必要はありませんが、摂りすぎに注意が必要です。特に毎日脂身の多い肉を食べる習慣がある方は要見直しです。
② トランス脂肪酸(最も避けるべき)
LDLを上げ・HDLを下げるという二重のダメージがある最悪の脂質です。
- マーガリン・ショートニング
- 市販のクッキー・ケーキ・菓子パン
- 揚げ物(特に古い油での揚げ物)
- ファストフードのフライ類
欧米では規制が進んでいますが、日本では食品表示義務がありません。原材料に「マーガリン」「ショートニング」「植物油脂(硬化)」と書かれているものは避けてください。
③ 一価不飽和脂肪酸(積極的に摂るべき)
LDLを下げ・HDLを維持または上げる良い脂質です。
- オリーブオイル(オレイン酸):地中海食の主役。心疾患リスクを下げることが多くの研究で示されている
- アボカド
- アーモンド・カシューナッツ
炒め物・サラダドレッシング・パンのつけ油をオリーブオイルに変えるだけで、日常的にオレイン酸を摂取できます。
④ 多価不飽和脂肪酸・オメガ3(最も積極的に摂るべき)
LDLを下げ・中性脂肪を下げ・HDLを上げるコレステロール管理の最優秀脂質です。
EPA・DHA(動物性オメガ3):
- サバ・イワシ・サーモン・マグロ・ブリなどの青魚
- 週2〜3回食べることが推奨されている
αリノレン酸(植物性オメガ3):
- 亜麻仁油・えごま油(加熱に弱いためサラダや納豆にかける)
- くるみ
特にサバ・イワシ・サーモンを週2〜3回食べる習慣が、コレステロール管理において最も効果的な食事習慣の一つです。
LDLを下げる食品
食物繊維(水溶性)
水溶性食物繊維は腸内でコレステロールの材料となる胆汁酸を吸着し、体外に排出します。コレステロールを下げる食品として最もエビデンスが豊富です。
水溶性食物繊維が豊富な食材:
- 大麦・オートミール(β-グルカンが特に効果的)
- オクラ・なめこ・モロヘイヤ(ねばねば食材)
- りんご・みかん・プルーン(ペクチン)
- こんにゃく・海藻類
白米を大麦入りごはん(2〜3割大麦)に変えるだけで、毎食水溶性食物繊維を摂取できます。
大豆・大豆製品
大豆タンパクにはLDLを下げる効果があり、大豆イソフラボンはHDLを上げる働きもあります。
- 納豆(毎日1パック)
- 豆腐(1日1/2丁)
- 豆乳(1日1杯)
- 枝豆・きな粉
和食中心の食生活が欧米より心疾患リスクが低い理由の一つに、大豆食品の日常的な摂取があります。
植物ステロール
植物ステロールはコレステロールと化学構造が似ており、腸でのコレステロール吸収を競合的に阻害します。
- ナッツ類(アーモンド・くるみ・ピスタチオ)
- 植物油
- 大豆製品
コレステロールを上げる食習慣・生活習慣
食べ物以外の要因も重要です。
| 悪化要因 | 理由 |
|---|---|
| 喫煙 | HDLを下げ、LDLを酸化させ動脈硬化を促進 |
| 運動不足 | HDLが下がる(有酸素運動はHDLを上げる) |
| 肥満 | 中性脂肪・LDLが上がり、HDLが下がる |
| 過剰な糖質・アルコール | 中性脂肪を増やし、HDLを下げる |
| 精製糖・甘いもの | 余剰エネルギーが中性脂肪に変換される |
「脂質異常症の食事制限だけやっている」という方が多いですが、運動・禁煙・体重管理と組み合わせることで初めて効果が出ます。
コレステロールが高い人の1週間食事モデル
毎日の基本(変えるだけで効果が出る):
- 白米 → 大麦入り玄米(水溶性食物繊維+LDL低下)
- 炒め油 → オリーブオイル(LDL低下・HDL維持)
- 肉の脂身 → 鶏むね肉・ささみ・赤身肉に変える
- お菓子・菓子パン → ナッツ類・フルーツ
週2〜3回は必ず:
- 青魚(サバ・イワシ・アジ・サーモン)→ EPA・DHA補給
毎日の習慣:
- 納豆1パック → 大豆タンパク+食物繊維
- わかめの味噌汁 → 水溶性食物繊維
- 亜麻仁油またはえごま油をサラダにかける → オメガ3補給
「卵はコレステロールが高いから食べてはいけない」は古い
かつては「卵を1日1個以上食べてはいけない」という指導が広まっていましたが、現在の見解は変わっています。
卵に含まれるコレステロールは、食事からの摂取量に応じて体内での合成が調節されるため、健康な方が1日2個程度食べてもLDLへの影響はほとんどないことが多くの研究で示されています。
ただし脂質異常症の治療中の方・心疾患リスクが高い方は、主治医の指導に従ってください。
看護師が現場で見てきた「後悔する前に」
脂質異常症の患者さんが心筋梗塞・脳梗塞で入院してくるのを何度も見てきました。
共通しているのは「健診で引っかかっていたのに放置していた」という事実です。
脂質異常症は自覚症状がほぼありません。「コレステロールが高い」と言われても体調に変化がないため、後回しにしてしまいがちです。
しかし動脈硬化は10〜20年かけてゆっくり進行します。40代で食事を変えると、50〜60代の心疾患リスクが確実に下がります。
「症状がないから大丈夫」ではなく、「今変えると10年後が変わる」という発想で食事に向き合ってください。
まとめ:コレステロール管理の食事3原則
① 油の種類を変える
- オリーブオイルをメインに使う
- 青魚を週2〜3回食べる
- 亜麻仁油・えごま油をサラダにかける
② 食物繊維を増やす
- 大麦入りごはんに変える
- 毎食に野菜・海藻・きのこを加える
- 納豆・豆腐を毎日食べる
③ 避けるものを減らす
- マーガリン・ショートニング含む加工食品を減らす
- 脂身の多い肉・揚げ物の頻度を下げる
- 甘い飲み物・お菓子の量を減らす
今日の食事から油の種類を1つ変えることが、10年後の血管を守ることにつながります。
この記事を書いた人:いっしん(看護師歴10年以上・元飲食経営者)
専門:予防医学・食事療法
運営:yoboshoku.com

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